2025年度 名古屋音楽大学 入学認定式
清水皇樹 学長式辞(全文)

新入生の皆さん、保護者の皆様、入学おめでとうございます。
ご来賓の皆様、ご列席を賜りまして、誠にありがとうございます。
今年は昨年と同様に開花が少し遅れ、ちょうど今、これからの皆さんを祝福するように美しく咲いてくれています。
祝福と言えば、まさにグッドタイミングで素晴らしいニュースが舞い込んできました。
昨日の新聞等でも、ご存知の方も多いと思いますが、本学の学生でもある神原雅治君が、先月25日からパリで開催されていた、世界的な国際コンクールであるロン=ティボー国際ピアノコンクールで、見事に第4位に入賞しました。
本来であれば、今日もその辺りの席に、大学院一年生として座っているはずの学生、皆さんの仲間なのです。彼はまだ今ちょうど飛行機の中、あるいはもう日本に着く頃でしょうか。
このコンクールは、世界的に活躍したいという、若手演奏家の登竜門として80年以上の歴史を誇る国際音楽コンクールです。フランスが産んだ二人の偉大な演奏家、ピアニストであるマルグリット・ロン、それからヴァイオリニストのジャック・ティボーの名前が由来になっています。
3年に一度行われるこのコンクールは、来年2026年はヴァイオリン部門が開催される予定です。
5人に絞られたファイナリストの内、ただ一人の日本人ファイナリストとなった神原君は3月30日、ついこの間ですが、パリ・コミックオペラ劇場で、フランスのオーケストラとブラームスのピアノ協奏曲第一番を本当に立派に演奏しました。
どんな演奏だったか、と申しますと、まさに魂が揺さぶられるかのような迫真の演奏。
何より私が素晴らしいと感じたのは、神原君自身、今の自分の持てる力を全て出し切って、命を賭けて演奏しているその姿に非常に感銘を受けました。感動しました。私の中では彼が優勝です。
ドイツの偉大な作曲家であるブラームスと、演奏している彼自身、そしてその場に居合わせた満席のパリの聴衆の人々、またストリーム配信で必死にリアルタイムで応援している私達がまさに今、ブラームスを通して「共に素晴らしい命を今、生きている」という不思議な感覚に浸っていました。
この「共にいのちを生きている」という言葉ですが、これは「共なるいのちを生きる」という私達の学園、同朋学園の「同朋和敬」という建学の理念、精神にも強く繋がっているのではないかと考えます。
もちろん、彼もまだまだこれからこの大学院で研究の日々が続くわけですが、彼のようにここにいる皆さんが、それぞれの道でのエキスパートになって欲しいと思います。
でもそれは、どの道も簡単なわけではなく、険しく厳しいものであるかもしれません。
しかしながら、新入生の皆さんは音楽が大好きだからこの道を選んで、この名古屋音楽大学に入学してきたことと思います。
だからこそ、厳しい道のりがあるかもしれませんが、音楽に賭ける熱い情熱でこの4年間、大学院の人は後2年間、しのぎを削って勉強、研究をしてください。
研究に没頭するための環境は揃っていると思いますし、また本当に素晴らしい先生方が「めいおん」には沢山いらっしゃるので、皆さんが4年後、大学院の人は2年後にこの大学から巣立っていく時、どんなエキスパートになっているのか、今から楽しみにしております。
名音大には17のコースがあります。ピアノ演奏家、管楽器、打楽器、作曲、声楽、ミュージカルなど、先ほどの入学生認定の際、沢山の様々なコースの皆さんが紹介されました。
皆さんにはそれぞれの専攻、専門分野があります。その専門分野でのエキスパートになるべく、研究を極めて欲しいのはもちろんですが、それと同時に、自分の専門以外の音楽にも、大学に在学している間に色々触れて親しんで欲しいと思います。
大学主催の様々なコンサート、演奏会、公演には足を運んで、是非とも聴きに来てください。
いつも同じコースの人と一緒にいるのではなく、17ものコースがあるのが名古屋音楽大学の特徴の一つでもあるので、いろんなコースの人達とも友達になって、出来れば違ったジャンルだからこそ出来る共演、コミュニケーションを取ってみてください。きっと自分の音楽、表現の幅がグンと広がると思います。
そして、今年度の新入生の皆さんは、今までの先輩達とは少し違った新しいカラー、個性も加わります。
今年度から始まったメディアサウンドデザインコース。パソコンを駆使してゲーム音楽等を創造したりするコースは今までにありませんでした。そんな仲間が新たに加わります。
それから、将来オーケストラを指揮する学生がこの大学から誕生したら、どんなに素敵だろうという思いで始めた指揮コースにも一人仲間が加わりました。
また、早くから世界に出て頑張りたい、という高校2年生の皆さんを「飛び入学生」として今回2人認定しました。
皆、私達の大切な音楽仲間です。
お互いの違い、個性を認めあい、一緒に学ぶ。まさに音楽を通して「共なるいのちを生きる」ことになると思います。
この名古屋音楽大学でしか出来ない豊かな学びを、私達教職員は全力で皆さんをサポートしていきたいと思っております。
皆さんも貴重な大学生活を充実したものになるよう全力で頑張ってください。
皆さんの入学を心から歓迎します。
入学おめでとうございます。
令和7年4月2日
名古屋音楽大学学長 清水皇樹



